シエナ(6)【シエナ13管「グラン・パルティータ」】2007年05月25日 09時55分41秒

皆さんOH!バンデス。
シエナは、今年のせんくらでモーツァルト作曲のセレナード第10番変ロ長調「グラン・パルティータ」を演奏します。

いわゆる「吹奏楽」とは趣の違う作品ですが、アンサンブルと言うには編成が大きいです。その内訳は、オーボエ2、クラリネット2、バセット・ホルン2、ファゴット2、ホルン4、コントラバス1と言う編成です。

モーツァルトは「セレナード」というジャンルの作品を全部で13曲作っていますが、このうち3曲が管楽合奏です。この3曲が作られたのは、モーツァルトがザルツブルグからウィーンに移って間もない頃で、当時オーストリアの貴族の間では色々な管楽アンサンブルを召し抱えるのが流行していたみたいです。お抱え楽団を持っているなんて贅沢ですね。羨ましい…さて、曲の内容ですが、全部で7つの楽章に分かれている大曲です。一つ一つの楽章はそれほど長くはないのですが、どれか一つを抜粋して聴いても聴き応えのあるものばかりです。特に第6楽章は「主題と変奏」といって、主題の後に6つの変奏が演奏されます。まるでこの楽章だけで一つの作品のような感じもします。そんな大曲ですが、演奏する我々も今から非常に楽しみにしています。

ちなみに、リヒャルト・シュトラウスも「グラン・パルティータ」を意識して作曲したと言われている「13管楽器の為のセレナード」と言う作品を残しています。こちらも名曲なので機会がありましたら是非聴いてみてください。

今年のせんくらでは、いつものシエナとはひと味もふた味も違った響きを皆様にお届けします。
乞うご期待!

執筆:ホルン 林育宏

和谷泰扶(6)2007年05月25日 09時55分55秒

6日目 今日は演奏曲目について少々触れておきたいと思います。 

ハーモニカのオリジナル曲、スペイン幻想『トレド』の作曲者であるジェームス・ムーディー(1907~1995)はアイルランドのベルファストで生まれ、13歳のときすでにピアニストとして才能を表し、BBCなどで作曲や編曲を手掛けました。私の師であるトミー・ライリーと共にハーモニカ音楽を追求し、オリジナル作品は数十曲にもおよびます。1989年の世界コンクールで私が第1位になったときの審査員の一人で、私の演奏を聴いて彼は自作品の演奏を許可してくださいました。(その当時許可なしに演奏する事は困難な事でした。)

『トレド』はハーモニカの技巧が生かされた秀作で石畳を駆け巡る黒牛、緊迫した闘牛の情景、ボレロのリズムにのって夜更けまで続く情熱的な祭りを感じさせます。オーケストラバージョンもあり2005年に仙台フィルと共演させていただきました。 

『シンドラーのリスト』はスピルバーグ監督の映画のテーマ曲で、ジョン・ウィリアムスの作品です。

映画の内容は第二次世界大戦下のポーランドにおけるナチス・ドイツによるユダヤ人迫害にまつわる話です。私がまだドイツ在住のころ、アウシュビッツを訪れたことがあります。

胸が締め付けられる思いでした。ちょうどその時イスラエルからの修学旅行の若者に出くわし、泣き叫んでいたことが思い出されます。アウシュビッツの近くビルケナウはドラマ『白い巨塔』のロケでも使われたユダヤ人収容所で、入り口の引込み線が暗い歴史を物語っていました。

家畜以下の生活、苛酷な労働、そして敷地の奥にはガス室と焼却所・・・。

広い敷地内を歩いていますと、没収させられた金属類が集めてありました。スプーンやナイフ、ドアのノブなど。目を凝らして見ていたら多くの金属類に混ざって『クロマティック・ハーモニカ』の部品が見つかったのです。1940年代、すでに持っていたユダヤ人がいたのです。クロマティック・ハーモニカを吹いていたユダヤ人がいたのです! しかし・・・。

その部品はあたかも私に見つけて貰いたかったように顔を出していました。目に沁みるような青い空、陽がいっぱいに降り注ぐ木立群、深い静寂の中、彼らの喩えようのない悲しみに触れた一瞬でした。

恵まれた時代・環境でハーモニカを演奏できることに感謝しながら演奏します。