渋谷由美子(7)2007年07月07日 09時57分38秒

歳とともに一週間が早いと感じるこの頃です。

人生の折り返し地点はとうの昔に過ぎたのですが、気持ちだけは若く、なんだか自分が歳をとっていくのが不思議な気がします。

昔に戻りたいとあまり思わないのです。

もちろん懐かしい、ああいい時代だったと、昔を懐かしむ気持ちは人並みに持っているつもりです。

高校時代に田舎から出てきて桐朋に入って、自己紹介をしたときに、九州弁で出て大笑いされたこと。

今ではテレビで全国区になったからかえってかっこいいといわれるもの、私の時代は笑いの対象でした。

小学生の6年生のときは、大阪まで寝台車に乗ってレッスンに一人で通っていました。

私のうちは両親教員とあって、また弟がいることもあって母親は私についていく事ができません。

中学生になると東京まで寝台特急ブルートレインに乗ってレッスンに行っていたので、「みずほ」 「はやぶさ」 「さくら」にこのようなものは絶対見たくない、乗るなんてとんでもないというほど乗りました。

一人で乗っていると、みんな必ず親切に声をかけてくれます。

とにかくヴァイオリンのレッスンに行くというのがみんなの注目を引くようで、いろんなことをたくさん質問されました。

このときに、知らない大人と会話することを身に着けたのかもしれません。みかんやお菓子をよくいただきました。

今考えると、うちの親は子供を一人で出す勇気が良くあったな、と感心します。

前橋汀子先生のレッスンに行くときも、最初だけついてきてくれて、後は自分ひとりで行くように、一回で行き方を覚えるようにと言われました。

しかし、案の定電車を降りてから歩いていくときに道に迷い、先生に電話をして、駅まで迎えに来てもらったこともあり、それも懐かしい思い出です。

このような思い出には母親の強い意志、忍耐と、私に対する期待を忘れることはできません。
私の両親は二人とも健康で過ごしていることもあり、あまり感謝という気持ちは薄いのかもしれません。

飛行機で2時間で行けるといっても、やはり福岡県の飯塚市あまりにも遠い。

「我が母に教え給いし歌」を演奏するときは、子供のときにいつもいろんな歌を歌っていた、故郷の母親のことを思い出さずにはいられません。

中川賢一(7)2007年07月07日 09時59分07秒

最後に仙台クラシックフェスティヴァルの初日に共演させていただくスヴェトリン・ルセヴさんのついてお話をさせていただきたいと思います。

私が共演させていただいた中で、彼は間違いなく最高の音楽家の一人と断言できます。

というよりも、尊敬の念がやまず、むしろ自分みたいなものがこんな素晴らしい人と共演してしまってよいのだろうかと思ってしまうことさえあります。

皆さん知ってのとおり第1回仙台国際音楽コンクール第一位、オーヴェルニュ室内管弦楽団コンサートマスターを経て、現在パリ国立放送フィルハーモニー管弦楽団のソロコンサートマスターです。

優勝した次の年に仙台市のコンクール委員会よりルセヴさんが仙台でコンチェルトを演奏する際、仙台のメンバーと室内楽をしたいというので、依頼されたのが彼と出会うきっかけだったと思います。確か彼の大好きなチャイコフスキーのピアノトリオだったと思いますが、その最初の音を聴いたときからショッキングでした。

それは言葉に言い表せないもので、それからというもの彼のファンとなってしまい、ことあるごとに共演の機会をいろんな方に作っていただいたり、作ったりしました。

彼の凄いところは音楽もさることながら、その人柄です。私の中のマイ格言で「ほどほどに凄い人はすぐ偉ぶったりするが、頂上にいる人は人格も素晴らしい」というのがあるのですが、彼は非常に頭がよいのですが、気さくで常にその切れる頭脳をひけらかさず、また家族を(素敵な娘がいる)非常に大切にし、友人を大切にし、常に好奇心旺盛で、常に日本食にチャレンジし、気分が乗れば内輪(うちわ)のパーティーでも喜んで演奏してくれる。リハーサルは非常に厳しく細かいが、決して人を傷つけない。

こうやって書くとあまりにもできすぎた人のようですが、バランスの取れている人はそれがあまりにも自然で、いわゆるフツーのひとに一見見えるのが不思議です。

あるとき長野に演奏に行って帰りの電車のチケットを私が見たところ、彼が「そのチケットを見たい・・・」というので「?」と思いあまり気にしませんでしたが、何回かいうので見せたら、実は私のだけが出発時間は合っていたのですが、一日ひにちが違っていたということがありました。まず数字以外は日本語、漢字でわかるわけも無く、見たのも一瞬だったのですが、それもさりげなく指摘するところが「ん~~~」とうなってしまいました。

世界のコンサートマスターは普通の観察眼だけではだめで、いつもどの国でもやっていけるエスパーみたいな能力があるような気がします。第一彼はブルガリア人で10代からパリに来て独学でフランス語を学んだそうですが、私の友人のパリジャンは「初めてルセヴに会ったとき外国人とわからなかった」くらいフランス語がぺらぺらだったとのこと。英語は当然ぺらぺらです。

彼は今年から2カ月おきくらいにソウルフィルのコンサートマスターも兼任することになったので超大忙し。でも日本に来やすくなったのでもっと頻繁に来てほしいです。今度はハングルが超うまくなってたりして・・・・

日本でもどこかコンサートマスターで呼んでくれる所はないのでしょうか???

さて、ここまで読んでいただいた方、本当にどうもありがとうございます。少々陰気な話もあり失礼いたしました・・・。まとまって文章を書くことも最近なくなったので、今の時点での思っていることを書かせていただきました。
 
しかしながら私が一番嬉しく楽しみなのは、皆さんとコンサート会場でお会いして、音を通して会話ができるかもしれないことです。是非皆さんコンサート、それ以外のときでも気軽に声をおかけください!
 
どうもありがとうございました。