せんくら、この1曲!2007年10月10日 10時46分59秒

*写真はサイン会の福田進一さん、長谷川陽子さん

こんにちは、プロデューサー・アシスタントの壇です。
せんくら2007にお越しいただいたお客様、お楽しみいただけたでしょうか?
きっとどのコンサートを見た方もみなさんそれぞれにお楽しみいただけたことと思います。手前味噌になりますが、私が業務の合間に覗いた公演はどれも捨て公演なしの、素晴らしい公演ばかりでした。
色々な業務を行ないながらでしたので、45分のコンサートを全部聞けることはほとんどありませんでしたが、聞いた中でも特に印象に残った1曲を取り上げて、コメントしてみたいと思います。

10月6日(1日目) 青年文化センター
<公演番号3 米良美一>
ヨイトマケの唄
この曲を歌う前にトークが10分以上ありましたが、まるで講演会を聞いているかのようでした。
小さいときに生死の狭間をさまよったこと、いじめにあったこと、「もののけ姫」で時代の寵児になり天狗になったこと、どんどん欲深くなりついにはどん底まで落ちたこと、しかし色んな人との出会いの中で本当の自分の生き方、歌う理由を見つけたこと、など。
とても胸を打つトーク、人生論で、鼻をすする音がところどころで聞こえたり、ハンカチを顔にあてている人がいて、泣いている人が何人もいました。
もちろん続いて歌われたヨイトマケの唄も、大変力のこもった熱唱でした。

<公演番号4 中鉢聡>
プッチーニ:「トスカ」星は光りぬ
たった1曲のアリアなのに、まるでオペラの一場面を見ているかのようでした。
自分の死の前に、愛する女性トスカのことを想いながら歌う悲しいアリアなのですが、力強い歌声と壮絶で胸を打つ表現が素晴らしく、男の僕も中鉢さんに惚れてしまいそうでした。(最後はウソ)

<公演番号9 波多野睦美、つのだたかし>
サリーガーデン
曲名を知らなくても、誰でも一度は聞いたことがあると思います。日本語で「柳の庭」という意味だそうです。波多野さんはその素敵な歌声ばかりでなく、毎回、歌う曲の歌詞をすごく素敵に解説していただきました。
簡単にいうと恋人に去られてしまった男の失恋の歌です。この曲のタイトルとメロディを聞くと、僕は色んなイメージが膨らみます。空想癖とでもいうのでしょうか?
皆さんはそういう経験はありませんか?

<公演番号11 御喜美江&池上英樹>
モーツァルト:3つのコントルダンスより
アコーディオンとマリンバ、実際聞いてみてすごく素敵な組み合わせでした。天から降る雨粒のようなマリンバの音と、アコーディオンの優しい響きが何とも言えない調和を醸し出していました。
デュオなのにデュオでないような、夫婦でないのに一人の人間というのでしょうか?変な例えですいません(苦笑)、まるで「合わせている」という感じのしない、これ以上ないデュオの演奏でした。

<公演番号19 佐々木真史>
コダーイ:セレナード 2つのヴァイオリンとヴィオラのための
本当に公演のタイトル通り(笑)、渋いヴィオラの響きを堪能できる公演でした。
また佐々木さんのお話が大変フレンドリーで、ヴィオラ奏者が隣りでいつも目立っているヴァイオリン奏者を日頃どう思っているのか、奥ゆかしくも屈折したヴィオラ奏者の脳内を垣間見ることができました。


10月7日(2日目) イズミティ21
<公演番号73 藤原真理>
グリーグ:チェロ・ソナタ
チェロの音には、イズミティ21の小ホールはちょうど良く合っていると思いました。チェロの豊かな音色とホールの響き、グリーグのロマンティックな和音が何ともいえない素晴らしいバランスでした。
後で聞くところによると、真理さんも大変このホールがお気に入りになったそうです。

<公演番号75 早川りさこ>
エストレリータとサン=サーンス:ファンタジー
2曲を対比します。エストレリータはポピュラーソングといえる程有名なメロディで、ハイフェッツがヴァイオリンとピアノのために編曲したものを、ピアノの代わりにハープで演奏。とてもお洒落な和音を使ったアレンジなのですが、ハープで演奏するには2分半の演奏中でなんと110回も(!)ペダルを踏むのだそうです。
簡単に説明すると、ハープはその構造上、半音階(ピアノでいう黒鍵)を出すのに半音上げるペダルと下げるペダルを使いこなさなくてはなりません。ペダルはハープの底面にドからシまで7種あり、例えばドの半音上げるペダルを入れると、ハープのドの音の弦は全て半音上げるということです。
早川さんがどうしてこの曲を取り上げたのか、その理由はハイフェッツの素晴らしいアレンジをハープで再現するのは大変な勇気がいることだから、と。なんと男前な発言!
もちろん演奏は完璧!・・・だったと思います、というかそれくらい結構アバンギャルドな和音なんですよー、ほんとに。
一転して、サン=サーンスのファンタジーではハープらしさを生かしたアレンジが随所に出てきて、ハープらしい見た目の優雅さもあり、またメロディも美しくかつ分かりやすく、それぞれの楽器の長所が生かされた佳曲でした。

<公演番号77 山下洋輔&山形交響楽団>
ラプソディ・イン・ブルー
私が見た公演で一番の盛り上がり。
山下洋輔さんはさすがの貫禄。20数分の間にさまざまなメロディが紡がれては弾け飛び、ジャズのリズムの聖典のような演奏でした。
山響の演奏を聞くのは初めてでしたが、オケならではの豊かな響きを、しかしどっしりとした重さは全くなく、ジャズ特有の軽さで聞かせてくれました。
舞台裏ネタですが、実はこの曲、山下さんとオケは本番当日朝の40分で合わせただけなのです。指揮の飯森範親さんの手腕に拍手!
期待値の高い公演でしたが、期待値を大きく超える大変な名演で、お客様もスタンディング・オベーション!!!

<課外授業>
2日目の夜、偶然にもチェロの長谷川陽子さんご家族と某音楽事務所のスタッフと飲むことに。
長谷川さんは、演奏家の友人たちに「せんくら出るんだ、いいなー。どんな感じなの?」と言われて「いいでしょー」と自慢したそうです。何かすっごく嬉しくないですか?
せんくらは通常のクラシックのコンサートではない「クラシック・フェスティバル」なので、演奏家の皆様には様々なご不便をおかけしています。GPが短い、楽屋の使用時間が限られている、ホールに入って楽屋まで来るのもアテンドなしの自力とか、ケータリングも水だけ等々。
それもこれも
「すべては1,000円で最高の演奏を聴いて頂くため」
です。
昨年に引き続いてご出演の長谷川さんから先のような発言が出るとは、フェスティバルの趣旨を深くご理解頂いているのだと、大変感謝感激雨霰。
ピアノの花房晴美さんも朝10:45の本番からその日の夜の最後の本番まであることろを、「学生に戻ったみたいで新鮮だわー」と、おもしろがって下さいました。
せんくらはこういうご理解なくては成立しないのです。この場をお借りして出演者の皆様、所属マネジメント会社の皆様に深く御礼申し上げますm(_ _)m


10月8日(3日目)
<公演番号79 山下洋輔>
なんとオーボエの茂木大輔さんが飛び入り! お客様もスタッフもびっくり&大喜び。来年は是非正式なご出演をお願いします(と、アシスタントのくせに勝手に思ってます)。

<公演番号90 アミーチ・クヮルテット>
ハイドン:「蛙」より フィナーレ
変わったタイトルですね。プログラムのメインはベートーヴェンの「ラズモフスキー」。やっぱり弦カル、これぞクラシック!という感じの響きと演奏でした。
チェロの原田さんが「せんくらポッドキャスト」で、
「クヮルテットというのは4人の関係が音楽的にも生活的にも濃密すぎて、逆にマンネリ化してしまう危険性がある。でもしょっちゅうメンバーチェンジしてはクヮルテットの醍醐味がでてこない。このアミーチ・クヮルテットでは常にフレッシュな演奏がしたい。」
という意味のことを言ってます。この度の演奏を聞いて納得。演奏やアンサンブルはきっちり計算されているのに、メンバーがそれぞれ生き生きと楽しそうに演奏しているのが見て聞いてわかりました。
「蛙」はハイドンらしいリズミックで楽しい曲で、そんなアンサンブルにぴったり。トークで原田さんがなぜこの曲を選んだのかというと、4人のメンバーが今回の演奏のために世界各地から集まって、今日「帰る」からだそうです。
なんだい、ダジャレかよ!って思いましたね(笑)。

<公演番号99 菅英三子>
ヴェルディ:ああ、そは彼の人か~花から花へ
仙台ご出身のソプラノでチケットは即完売、客席もパッツパツでした。
菅さんの歌は初めて聞きましたが、軽やかで涼しげな声と上品な表現がとても好みでした。ブラーヴァ!!

<公演番号101 仙台フィルハーモニー管弦楽団、他>
ベートーヴェン:第九 第4楽章
ついにフィナーレ。感無量です。
第九の第4楽章だけ聞くというのは初めての経験ですが、1コマ45分なので当然こうなりますよねー。
第1楽章から通して聞かず、最終楽章だけ聞いても素晴らしいというのは本当に名曲なんだと思います。
でも、もちろん1楽章から最後まで70分くらい頑張って通して聞いた方が感動も大きいですよ、途中寝てても(笑)。ご興味を持たれた皆さん、是非今年の年末は第九のコンサートに足を運んでみてはいかがでしょうか?
指揮の山下一史さん、ソリストの皆様、仙台フィル・せんくら合唱団の皆様もお疲れ様でした!


最後にこの場をお借りして、せんくら2007関係各社の皆様に厚く御礼申し上げます。
本当にお疲れ様&ありがとうございました。

壇 一秀(プロデューサー・アシスタント)

コメント

_ あきの ― 2007年10月10日 15時03分04秒

せんくら2007が終わってもう2日経つと言うのに、まだ余韻が残っていて、「走らないと次の公演に間に合わないかも!」と言うあの焦りが、今にも蘇ってきそうな程です(余韻と言うか悪夢?)
出演者さん、スタッフさん、ボランティアさん、その他私が気づいていないかもしれない関係者の皆様、本当にお疲れ様でした。
私もここに、壇さんのように、聴いた公演の中でのこの1曲!を書き連ねたい位です。でもそれをすると、コメント欄じゃきっと書ききれないし、何より1曲だけを選ぶのは非常に困難です。例え1公演の中からだとしても。
聴きたい公演を、とりあえず時間が重ならないように注意してチケットをとってみたら、空き時間が30分しかないのに、地下鉄で20分近くかかり、更に前の公演が盛り上がってしまって45分じゃ終わりきらず時間がオーバーして…アンコールの嬉しさと悲しさが入り混じりつつ、電車に乗る前と降りた後に猛ダッシュ!!と言う事を何度繰り返した事か…。
その度に、他のお客さんや、出口で向かえてくれるスタッフさんたちの「ありがとうございます」を無視するような形で通り過ぎ、またご迷惑をおかけしてると思うと、毎回心苦しくもあり、でも止める事も出来ず…とにかく、クラシックコンサート=座って聴くだけの文化系、と言う印象はどこへやら、と言う3日間でした。
更に、今年は知人と二人で仙台に乗り込んで行ったはいいものの、趣味が違っていた為選んだ公演は見事にバラバラ、寝る時間にやっと再会、と言う感じでもありました。翌日からの仕事を忘れたくて、最終日の高速バスの中で二人、ひたすら爆睡した所からも、私達がいかに駆けずり回って(這いずり回って?)せんくらを満喫したかお解り頂けるかと思います。
楽しかった、その一言に尽きます。
だから、来年もまた行こうねと、既に約束しております。仕事が入らなければ…いや、仕事も休む勢いで!(笑)
とにかく、来年もまた宜しくお願いします。3年目こそは、もっと余裕を持ったスケジュールにしたいですけど…無理そうだなあ…。
いつかボランティアとして関わってみたいなと考えてもいますが…もう少し、気ままに堪能させて頂こうと思います。またご迷惑をおかけするかと思いますが、宜しくお願いします。

そう言えばふと思ったのですが、せんくらの公演を、CDやDVDと言った形式で残す案はないのでしょうか?せんくらならではの組み合わせの演奏などは、後からまた聴きたいなーと思う位素敵なものばかりで、勿体無いなと思います。その瞬間の演奏は二度と出来ない訳で、それを生で聴くのがコンサートの醍醐味だとは思うのですが、でも、やっぱり勿体無い気もします。
お金がかかるのは承知ですが、DVDで公演の様子を残す、それが無理でも、CDで音を残して販売する、そう言った予定があればなあと思います。
せんくらフリークの一聴衆の意見として、少しでも気に留めて頂ければと思います。
宜しくお願いしますm(_ _)m

_ 別のフリーク ― 2007年10月11日 02時08分05秒

いくつもコンサートを聴いて、ちょっとお手伝いして、ぐるめdeせんくらを食べて(カキ、シャリアピンステーキ、ア・ラ・ノルマ)幸せな3日間でした。

(忘れもの戻ってよかったですね)

_ 峰 ― 2007年10月11日 17時47分31秒

演奏会の主役は聴衆かも知れませんね。

_ せんちゃん ― 2007年10月13日 05時56分33秒

プロデューサー・アシスタントの壇さんのブログを読んで、「あー行きたかったコンサートは、やっぱり聴き応えがあったんだなあ」と思いました。だって完売でチケットが手にはいらなかったんですもん。。。
せんくらは、チケット争奪も一大イベント!ですよね。
ちょっと、いろんなコンサートを覗けた壇さんが羨ましい(笑)
ちなみにプロデューサー・アシスタントって、どんなお仕事なんですか?教えてくれたたら感謝です。

_ 壇一秀 ― 2007年10月19日 13時50分12秒

知らないうちにたくさんのコメントありがとうございます(笑)

プロデューサーのアシスタントとして私が行なっているのは、主に出演者関係との連絡、当日までのフォロー、契約等の事務の詳細です。

もちろん一人でやっているわけではなく、仙台の事業団にも心強いスタッフの皆さんがいます。

たしかに人気公演はチケット購入もたいへんですよね! オケだろうが、著名ソリストだろうが、すべて千円というのはやはりインパクトありますしね。

色んな公演をのぞいたのは、もちろんプロデューサーからの指示でもあり、公演内容だけでなく会場の雰囲気やお客様の盛り上がり等々も今後の参考にするつもりで拝見しておりました。

ただ、本当にどの公演も素晴らしかったので、いち音楽ファンとしてついつい楽しんでしまったのも本音です。あと、短期間で色んなホールを見て回るというのも珍しい体験ですので、とても興味深かったです。

たしかに移動は結構時間がかかりますし、今回もありましたが事故等で地下鉄が止まるなどした場合特に大変です。体力的なことも考えるとスケジュールはかなり余裕をみて組んだ方が良いですね。ですから初めてせんくらにきた人よりも、2回目の人の方がより効果的に見る公演を選べたと思います。

この1曲!を書いたのは、1曲しか聴けなかった公演も多かったのと、できるだけ臨場感あるブログにしてせんくらに来られなかった皆様にも現場の雰囲気を伝えたかったこと、そして誰よりも一番長いスタッフブログにしようともくろんだからです(笑)。

峰さんがお書きになっている通り、主役は聴衆だと思いますし、平井プロデューサーも第一に聴衆のことを考えたプロデュースを行なっています(と、常々聞いているので)。

もちろん演奏するのは演奏家ですが、良い聴衆なしに良い演奏は生まれませんから、聴衆はとても大事です。演奏家が一番そのことをわかっていますから、仙台の聴衆の素晴らしさを自身のブログに書いた演奏家も多かったのでしょう。
せんくらを取り上げた演奏家のブログ等は、平井プロデューサーが案内していますから、そちらからリンク先へ飛んでみて下さい。

あとはボランティアスタッフの層の厚さも驚異的です。
ロビースタッフ、記録カメラマン、と皆さんそれぞれ音楽に対する熱意が強くて、そういうこともフェスティバルの雰囲気を盛り上げる大事な要素だとつくづく感じました。
あきのさんも是非来年は、少しでもボランティアスタッフとしてせんくらに関わってみてください。また違った楽しみ方が出来るかもしれませんよ。

こういう大規模なフェスティバルに関わるのははじめてでしたが、とても良い経験ができたことを関係者の皆様、演奏家の皆様、そして聴衆の皆様に感謝したいと思います。

そして夜の仙台も最高でした。どのお店も美味しかったですが、さんまの塩焼きが忘れられません! あと日本酒も! 東北で飲む日本酒が一番美味しいです。

今度は、せんくらブラグで一番長いコメントになってしまったみたいです(笑)

それでは、また来年のせんくらでお会いしましょう。

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