御喜美江(3)2007年08月14日 09時30分34秒


日本は連日たいへん蒸し暑い日々だそうで、友人、知人からくるメールには必ず「ヨーロッパの涼しさが羨ましい」とあります。まあ気温だけをとればこちらのほうがいいでしょうけれど、先週は大雨が3日間降り続けて、ドイツ・オランダでも大きな被害が出ました。水というのは実に恐ろしいものです。テレビや新聞のニュースに出るのは規模の大きな水害ばかりですが、今回私が被った(村のタダ新聞にすら載らないような)ミニ被害だって、自分にとっては疲労困憊系の大事件でした。

それは10日金曜日の朝。車をスタートさせた途端、ピチャピチャ、ポチャポチャ、派手な水音がします。それも外ではなく車の中で。「おかしいなぁ、雨はやんでいるのに。」と思いながら次の信号を右カーブすると、思わず水飛沫が飛んできました。「うわ~、これは一体なんだ!」と右サイドを見ると、なんと右側の床がまるで水槽のようになっています。これにはビックリ仰天、急いで大学の駐車場に引き返して守衛のおじさんをよんできました。守衛さんも車中をみるなり絶句。「バケツをひっくり返したような大雨だったからねぇ、でもそれにしてもこれはひどいや。」と。もちろん窓は全部ちゃんと閉まっていました。それから私は大きな雑巾を2枚借りて、腰の骨がへし折れそうになるまで水を外に出し、水槽が水たまり程度になったところで、なんとかオランダの自宅に戻ってきました。ところが我家の地下室へ降りてゆくと、なんとここにも水が!どっかから浸入してきた水は床全体を平面に覆ってキラキラと光っているのです。この時点でほとんど切れそうになりましたが、今朝テレビで見たニュースを思い出し「家一件なくした人もいるのだから頑張ろう!」と自分に言い聞かせ、ふたたび雑巾活動を開始したのです。
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アコーディオンは伴奏楽器として野外でもよく演奏されます。ですから「外で弾く楽器」と思っている人も多いのですが、実は水にものすごーく弱い楽器なのです。それも値段が高くなればなるほど、この楽器は水に弱い。なぜかと言うとアコーディオンには皮、木、紙といった素材がふんだんに使われているからで、とくに柔らかい皮と紙からなる「蛇腹」が濡れてしまったら、もうおしまいで修理も出来ません。また鍵盤やボタンの内部にはフエルトがあり、ここも水が大嫌い。ですからもし野外でアコーディオンを演奏する場合は、出来るだけプラスチックやビニール豊富のもの、濡れたら拭けるもの、そしていつでもどこでも購入できるお値段のもの、お勧めします。
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今回の水害ではつくづく「あぁ、アコーディオンが濡れなくてよかった。」と胸をなでおろしました。アコーディオン奏者の皆様、留守をするときは面倒でもアコーディオンはきちんとケースに入れ、できれば内部をビニールで覆い、可能な限り安全な場所に保管しましょう。

吉松隆(3)2007年08月14日 09時31分00秒


現在、作曲のお仕事としては、左手のためのピアノ協奏曲というのを作曲中です。これは、ピアニスト舘野泉さんのために書いているもので、タイトルは「ケフェウス・ノート」。今年の冬、ドレスデン室内管弦楽団の来日公演で初披露されることになっています。

左手のためのピアノ協奏曲というと、ラヴェルの有名な曲があるのをご存知の方も多いと思います。あの曲は、第一次世界大戦で右手を負傷し失ったパウル・ヴィットゲンシュタインというピアニストのために作曲された曲ですが、ラヴェル以外にもプロコフィエフやリヒャルト・シュトラウスやブリテンやヒンデミットやコルンゴルトなど錚々たる大作曲家たちが彼のために左手の作品を書いています。

これほど多くの作曲家が曲を献呈した演奏家と言うのもちょっと珍しいのですが、実はこのヴィットゲンシュタインというピアニスト、かの哲学者ルドヴィヒ・ヴィットゲンシュタインのお兄さんで、父親はウィーンで知らぬもののない大実業家にして大富豪なんですね。芸術家や画家や音楽家のパトロンとして、メンデルスゾーンからブラームス、ロダン、ハイネ、クリムトなどと親交があった大金持ちだったそうです。

ですから、身も蓋もなく言ってしまうと「札束で作曲家の頬をひっぱたいて」片っ端から書かせた…とも言えなくもないようで。書かせておいて「気に入らない」と演奏すらしなかった曲(プロコフィエフなど)もあったといいます。豪勢と言うか、もったいないと言うか。

でも、いいですねー。私も札束で頬をひっぱたかれて曲を書いてみたいものです。一生に一度でいいですから(笑)

今回の私の曲は、左手のピアニストになられた舘野泉さんのために書き下ろされるものですが、タイトルの〈ケフェウス〉というのは、秋の夜空に浮かぶ五角形の星座の名前です。「左手の5本の指」だけで弾くので、5つ星の星座の〈星のヴィジョン〉をイメージの核にしたというわけです。左手のピアノの美しい響きを室内管弦楽が優しく包む、5章からなる音楽(になる予定)です。

というわけで、夏の暑いさなかに秋の涼しげな夜空を思い浮かべながら作曲を進めています。無事に出来上がりましたら、12月8日に南相馬市民文化会館(福島)、10日に東京オペラシティなどなど国内数ヶ所で演奏される予定です。しかし、この暑さです。果たして、無事に書き上げることが出来るのでしょうか?