仙台フィルハーモニー管弦楽団(6)2007年07月13日 09時31分22秒


仙台フィルコントラバス奏者の市原聡です。早いもので、仙台フィルに入団してから20年となりました。

皆さん、コントラバスの弓の持ち方に、ドイツ式とフランス式の二通りあるのをご存知ですか。私は、日本ではまだ、あまり普及していない、フランス式の持ち方をしています。この持ち方をしているのは、仙台フィルでは私だけです。体の小さい日本人には、楽な姿勢で演奏できるフランス式の持ち方が向いていると、私は思っています。

私は、小・中学校のときに音楽に囲まれて育ちました。教室の机が足踏オルガンだったのです。教壇の近くにはピアノもあり、自由に弾くことができました。レコード鑑賞の曲を選んで、その作曲家について調べ発表する授業もありました。

将来は音楽評論家あるいは音楽学の道に進みたいと高校生のときに思ったのですが、音楽大学を目指してピアノを習っていた先生が、何か楽器が弾けると楽しいよといわれ、いいコントラバスの先生がいるからとりあえず会ってみたらと紹介されました。私は正直に一度だけとおもって会いに行ったら、有無も言わさず次のレッスン日が決められました。そうこうしているうちにコントラバスが好きになりました。

さて、「せんくら」ですが、音楽の好きな人を増やすという面では、いい企画だと思います。しかし、私は全てが45分のコンサートだけでなく、中には、きちんとしたコンサートがあってもいいのではと思います。45分のコンサートだと演奏できる曲が限られますよね。それから、演奏会になれた人には、曲が終わった後、ホールを包む一瞬の静寂、それも音楽の一部だと思って聴いていただきたいとおもいます。

私は、ベートーヴェンやブラームスなど頭文字が「B」の作曲家の音楽が大好きです。今年の「せんくら」の最後の演奏会では、ベートーヴェンの交響曲第九番の第4楽章が演奏されます。始まるとすぐにコントラバスが活躍しますので、ご期待下さい。

村上満志(6)恥ずかしながらの「昔話6」2007年07月13日 09時32分37秒

ベルリンでの留学生活は、月額750D.M(ドイツ・マルク)のドイツ政府からの奨学金のみで賄われていた。その額でオペラも聴けたし、ベルリンフィルの本拠地フィルハーモニー・ザールのポディウムと言う指揮者の正面の席のチケットも買えた。そして時々は先生にも、もぐり込ませて頂いた。

そんなベルリンでの生活で、冬の到来と共に必要不可欠なのが「コート」。ある日仲間とベルリンのスーパーマーケット(確かBilka ビルカ?と言ったと思う)へコートを買いに行った。

時代と国は違うが、1階食品、2階が衣類売場のヨークマート?もしくは西友?と言った感じである。2階の角の方に、ずらりと並んだコート、多くはイミテーション皮の150~200D.Mの物だった。しかし、人目を憚るように外れの方に暖かそうなラム(子羊)の内側に起毛した、その上柄が灰色と白のまだら模様、一目でものほん(本物)と分るコートが上等そうなハンガーに鍵つきで掛かっていた。値段は750D.M。1ヶ月分の奨学金と同額!!仲間と一緒に、ひやかし気分で店員に鍵を開けて呉れるように頼むと、「買いもしないのに、東洋の貧乏学生が!」と、口では言わなかったが、顔に書いてあった。店員が渋々鍵をはずしたコートに手を通すと、恥ずかしながら、初めて感じる感触。「暖ったか、温ったか、こんなコート有ったか?」さげすんだ顔を見返してやりたくもあったが、殆どはずみ(・・・)で「お買上げ」してしまった。

店を出て、買ったコートの暖かさ以上に、寒くなった懐具合に身震いした記憶は、今も残っている。

灰色と白のまだら模様がかもしだす雰囲気から、そのコートはそれからしばらく「象アザラシ」の異名を欲しいまゝにした。