山下洋輔(2)2007年09月24日 08時58分31秒

「せんくら」では「ラプソディ・イン・ブルー」を山形交響楽団、指揮・飯森範親さんでやらせていただきます。この曲を最初にやったのは一九八六年のことですからもう二十年になるんですね。大阪フィルが声をかけてくれて岐阜でやったんですが、何しろこっちは譜面を見るのが嫌でジャズ・ミュージシャンになった人間ですから、スコア通りの音を弾くのは大変なんです。でも三個所あるカデンツァを全部自分のアドリブにするというアイディアを手がかりに引き受けました。その初演の時は打ち合わせをしていた石丸寛さんが急病になって当日に松尾葉子さんがおいでになりました。いきなりという感じでやっちゃったんですが、あとで松尾先生が「即興ばかりなのでオケと合わせるのが大変だった」というユーモラスなエッセイを書かれているのを見て、やっぱり、と思った次第です。確信犯でアバレましたから、もうこれっきりでこういう機会はないだろうと思っていたんですが、この初演が話題になったせいか、その後色々なオケから声がかかるようになったのは望外でした。「変な奴がいるから一度呼んでみよう」という洒落気のある方がオケの世界にもいらっしゃるんですね。

というわけで僭越ながら「ヤマシタ版ラプソディ」というようなものができあがっています。どうかお楽しみください。指揮の飯森先生とは、神津善行さんのプロジェクトで一度お会いしました。シンフォニーと邦楽と阿波踊りとジャズ・ミュージシャンを見事に仕切られたのを見ていますので、なんの心配もしておりません。再会を楽しみにしております。

プロデューサーノート<NPO「文化創造」ゼミ>2007年09月24日 17時56分36秒

<神戸大学で開かれた文化創造のゼミ風景>

前文化庁長官の河合隼雄先生は、昨年のせんくら直前にお倒れになり、本年亡くなられましたが、お倒れになる直前に「文化創造」というNPOをお作りになりました。
これは文字通り地方に文化を創造するためのNPOです。

先生の死後も、このNPOは活動を継続しており、今回その一環として神戸大学で開かれたセミナーに参加してまいりました。

神戸大学大学院国際文化学の藤野一夫先生と、高知女子大学文化学部の松本茂章先生が指導されている学生の方々とゼミのような形で2時間ほど「せんくら」の話をさせていただきました。

我々の学生時代には大学にアートマネージメントの学科やら講座はありませんでしたが、徐々にできはじめて、今や各地でこの種の学科が増えています。さらにそこから、この種のことが早くから行われている英米の大学などに留学されている方も増えていますし、今後はこういった方々が音楽業界でも多数活躍されるでしょう。

アートマネージメントはその名の通り、アートとマネージメントですから、簡単に言えば芸術とお金と両方に強い専門家を作る、ということが目的になります。大学の教育でも、これまでは、どちらかと言えばアート系の先生のほうが多いように見受けられますが、段々お金に強かったり、現場での帳尻合わせの経験を持つ指導者も増えてきていますから、この方向でともかくお金を捌けるアート専門家の層を厚くするのが大事でしょう。

収入に対して支出が多過ぎると、個人でも家庭でもいずれは崩壊するように、楽しいアートフェスティヴァルでも収支を健全化しないと続けることができません。「ともかく、ひたすらお金に強くなって欲しい。」というようなお話をしてきました。

で、「せんくら」は?。とりあえずチケット単価が1000円と安くても、売り切れればトータルで4000万円以上の収入になります。皆様がチケットを買ってくださるのは、コンサートを聴けるだけでなく、「せんくら」を継続するための投資にもなっているわけです。ですから、このフェスティヴァルが楽しそうだ、と思われたら、「継続のための寄付、と思ってもう1枚買ってください」ということですね。

平井洋 せんくらプロデューサー